2006年07月26日

●蘇部健一『恋時雨』読了

蘇部健一氏の新作『恋時雨』を読了しました。

例によって、やや詳しい感想は蘇部健一応援pageに書いておきました。

それにしても、羽住都さんの綺麗な表紙絵は、今や蘇部健一作品では欠かせない要素の一つになったかのようです。『恋時雨』では挿絵も羽住さんが担当していて、しかも物語上重要な役割を果たしています。

2006年01月10日

●秦建日子『推理小説』感想

秦建日子『推理小説』(河出文庫)

私的満足度7(満点は10)

秦建日子氏は「天体観測」「ドラゴン桜」などのTVドラマを手がけた実績あるシナリオライター。本作『推理小説』は、初の小説作品です。

とにかく、『推理小説』というタイトルが大胆不敵そのもの。これを見て私は購入を決意しました。超変則的で斬新なトリックのメタミステリものではないか、一度読んでおかねば、と思ったのです。

物語は、三人称の多視点形式で進みます。互いに接点のない被害者の連続殺人。現場には「アンフェアなのは、誰か」と書かれた栞が残されます。この小説自体がアンフェアなのか? と不安にかられながら読み進めました。

ドラマ畑の人らしい目まぐるしい場面転換。ミステリの“常識”によると、こんなときは映像化が困難な●●トリックが仕掛けられていることが多いのですが、そうではありませんでした。ある意味でオーソドックスで、十分映像化も可能な本格ミステリ。しかし、真犯人を特定する際の決め手の一つは少々斬新。これをフェアとみるかアンフェアと見るかは読者次第でしょう。

また、探偵役の女性刑事・雪平夏見の造形は印象に残ります。30代のバツイチで大酒飲みで部屋は乱雑。しかし検挙率はNo.1で“無駄に美人”。いかにも映像化を前提としたような設定。

実際、この小説を原作とするドラマ「アンフェア」本日の22:10からフジテレビ系で放送を開始します。雪平夏見を演じるのは篠原涼子。うーん、どうでしょう。私は滅多にテレビドラマを観ないのですが、これは予約録画しておこうと思います。

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2005年11月05日

●「自殺をする前に読む本」感想

「力は、あなたの弱さの中から生まれるのです」フロイト
今年の9月にライブドアパブリッシングから発売された『自殺する前に読む本』(著者:ギル・バート)を読んでみました。 自殺する前に読む本(ライブドアブックス)

現在ライブドアが行っている自殺防止キャンペーンの中心的存在として扱われているようです。
100個の「事実(名言や歴史上の人物の生き様など)」を淡々と紹介するだけの本。自殺志願者を直接的に励ましたり、自殺を止めようなどと呼びかけたりはしません(実際、「頑張れ」などの励ましは逆効果であることが知られています)。

幸か不幸か私自身は自殺願望を抱いた経験がないので、この本が自殺抑止に有効かどうかは分かりません。ただ、100個の「事実」はいずれも心の中にズシリと響きました。現実と闘う意欲が少しは強まったような気がします。自殺うんぬんを抜きにして、日常生活の座右の書にするのも悪くないと思います。
ところで、直接的激励に依らずに自殺を抑止することを狙った書物といえば、1993年の名著・鶴見渉『完全自殺マニュアル』(大田出版)を思い出します。

残念ながら、『完全自殺マニュアル』は自殺防止本であることが多くの消費者に理解されず、現在では18禁扱いになっています。

実は、私が今までの人生で最も繰り返し読んだ書物はおそらく『完全自殺マニュアル』です(ただし『シャーロック・ホームズの冒険』とは僅差)。個人的には『自殺する前に読む本』はそこまでの名著とは感じられませんでした。インパクトと取材の手間で大きくひけをとります。
とは言え、多くの民衆に受け入れられる要素を備えた『自殺する前に読む本』も、貴重な存在であることは確かだと思います。

ところで、内容とは関係ないですが、帯に「かならず大反響」と書いてあるのは少々萎えました。自分で書くなよ、という感じ。

【関連サイト】 ライブドア公認の書評です。
【ファンキー通信】自殺をする前に読む本とは?