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2006年01月10日

●秦建日子『推理小説』感想

秦建日子『推理小説』(河出文庫)

私的満足度7(満点は10)

秦建日子氏は「天体観測」「ドラゴン桜」などのTVドラマを手がけた実績あるシナリオライター。本作『推理小説』は、初の小説作品です。

とにかく、『推理小説』というタイトルが大胆不敵そのもの。これを見て私は購入を決意しました。超変則的で斬新なトリックのメタミステリものではないか、一度読んでおかねば、と思ったのです。

物語は、三人称の多視点形式で進みます。互いに接点のない被害者の連続殺人。現場には「アンフェアなのは、誰か」と書かれた栞が残されます。この小説自体がアンフェアなのか? と不安にかられながら読み進めました。

ドラマ畑の人らしい目まぐるしい場面転換。ミステリの“常識”によると、こんなときは映像化が困難な●●トリックが仕掛けられていることが多いのですが、そうではありませんでした。ある意味でオーソドックスで、十分映像化も可能な本格ミステリ。しかし、真犯人を特定する際の決め手の一つは少々斬新。これをフェアとみるかアンフェアと見るかは読者次第でしょう。

また、探偵役の女性刑事・雪平夏見の造形は印象に残ります。30代のバツイチで大酒飲みで部屋は乱雑。しかし検挙率はNo.1で“無駄に美人”。いかにも映像化を前提としたような設定。

実際、この小説を原作とするドラマ「アンフェア」本日の22:10からフジテレビ系で放送を開始します。雪平夏見を演じるのは篠原涼子。うーん、どうでしょう。私は滅多にテレビドラマを観ないのですが、これは予約録画しておこうと思います。

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