No.71 バラン(2004/10/05)

 ブランカ国の支配者。光帝を名乗る。かつてラオウに弟子入りを志すが、一子相伝を理由に断られたため、ラオウに随従して見よう見真似で北斗神拳を盗み取る(ただし、後に意味不明な理由で追放される)。ブランカ国にはれっきとした国王が居るので、北斗神拳の圧倒的な拳力を用いて国を征服したのだろう。

 幼い頃、熱心な信仰者であった妹が死んだことをきっかけに、強硬な信仰否定論者になる。ブランカでは、秘孔により“奇跡”を演出することにより自らが“神”として君臨する一方、反体制の者を容赦なく処刑させた。また、ブランカの王女ルセリに対し、「幼い頃に死別した妹に似ている」という理由で求愛&ストーキング。ルセリ本人や、王族側の人間にとってはとんでもない悪党だが、一般の民衆にとってはそうでもない。バランに帰依する限りは危害を加えられないどころか、彼が起こす“奇跡”はむしろ人助けである。描写から判断しても、広範な民衆から支持を受けていたようだ。

 ケンシロウに凹られ、次いでラオウの息子リュウと会ったことにより改心し、ブランカ王に政権を返還。自らは公衆の面前で“光帝”であることを否定し(洒落ではない)、わざと矢を胸に受けて死亡した。事実上の自殺である。この部分を初読した際、別に死ななくても政権を譲渡する手段はあるじゃない、と思ったものだ。たとえば、政権変換後も、王を補佐する重職に就いて民衆のために秘孔を押し続けるとか。民衆は誰も文句は言わないだろう。

 でも、よく考えてみると、この自殺には必然性があるような気がしてきた。民衆のため、等の崇高な理由を抜きにして、バラン本人が個人的に死にたかったのでしょう。何しろ、自らの歩んできた生き方をケンシロウに否定されたばかりか、あれほど熱心に求愛したルセリを諦めざるを得ない状況なのだ。仮にブランカ国に留まったなら、ルセリとサトラの結婚を目の当たりにしなければならない。これは耐え難い試練である。口にこそ出さなかったが、「こんなに苦しいなら、愛などいらぬ(サウザー)」的な心境で死んでいったのではなかろうか。合掌。

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