No.60 カイオウ(2004/9/8)

 第1の羅将。北斗琉拳伝承者。ラオウ、トキ、サヤカの実兄。幼い頃に実母がヒョウ、ケンシロウの兄弟を火災から救って死亡した事件をきっかけに自ら情愛を捨てる。そのような冷酷さと豊かな拳才ゆえに琉拳習得後は魔界に入り魔人と化し、修羅制度をつくり支配者として君臨した。

 作品中の強さはおそらくトップクラス。ケンシロウとの第1戦では、北斗神拳の究極奥義・無想転生すらも見破って圧勝。素早くとどめを刺していればケンシロウは死んでいた。このようなキャラは他にはシン、サウザーしか居ない。もっとも、主人公が死んでしまっては話が進まない。駆けつけたシャチや赤鯱一味の横槍によってケンシロウを殺す機会を逸した。再戦ではカイオウの戦術は悉くケンシロウに見抜かれて惨敗したが、これは致し方ないであろう。

 カイオウは、「最後に勝利するのは悪」と言い切っている。確かに、ヒョウを魔界に引きずり込むために妹のサヤカを殺したのは常軌を逸している。しかし、シャチや赤鯱一味については、自分を殺そうとしたから殺しただけとも取れる。何より、彼が部下を殺すシーンは皆無。それどころか、直属の滅殺隊や陸戦隊の人々には慕われていた節があるし、少年時代のカイオウはその強さと人格によって仲間の少年たちから尊敬を集めていた。また、子作りを拒否したリンを殺そうとはせず、ナイフを渡して自殺を迫ったり、目覚めた直後に目にした人物を愛するようになる破孔・死環白を突くに留めている。

 以上のことから、カイオウは感情にまかせた無益な殺生はしていないことがわかる。彼のいう「悪」とは必ずしも残虐性とは一致せず、目的のためには一切手段を選ばないマキャヴェリズムのようなものなのだろう。

 なお、カイオウが修羅の国でつくりあげた統治機構および死環白はそれ自体興味深いものである。これらについては機会を改めて考察したい。

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